TKW M&Aファイナンス会計税務事務所
株価算定
デューデリジェンスで検出された事項を踏まえ、主に以下の手法で企業価値(株価)の算定を行います。
【成功のポイント】
・株式は1物1価ではありません。当事者が違えば、見方も変わり、株価も変わるものです。
・相続税評価では株式評価の手法は規定されていますが、所得税や法人税の世界で、非上場株式の評価の規定が薄いのはそのためです。たまに誤解がありますが、①売り手と買い手が異なり、②それぞれの交渉の結果で決められた譲渡価格であり、③論理的な説明ができる限りにおいて、税務上問題になることは少ないです。
・買い手も売り手も、なるべく多面的な手法で価値を考えましょう。
「DCF法は将来のキャッシュフローを取り込むから、理論的に優れている」
「マルチプル法は客観的で秀でている」
「純資産額法はストック価値を表しているため堅実である」
などの一般的なメリットがありますが、対象企業の業種業界によって見方も異なります。
・「株価算定はアートである」と言われることがあります。株価を吟味するためには、対象会社の置かれている経営環境や、投資家側のシナジー、メリットなどを考慮に入れる必要があります。
・事業計画の将来の実現可能性を検証することは、この時代においてはなかなかに困難です。従い、DCF法においては、いくつか場合分けをして、3~5パターンくらいの株価を出すことをお勧めします。
・2022年の春~夏は、円ドルレートが大きく変動した時期でした。PLが為替の影響を受けやすい業界においては、円高/円安の影響も事業計画に織り込むようにしましょう。
・買い手が上場会社の場合、株価算定のロジックについて、監査法人に後日検証される可能性があります。後日の検証でNGが出ないように、株価算定前に鑑定人と監査法人とでロジックのすり合わせをしておきましょう。
・よくあるのが、ベータの周期や、ヒストリカルリスクプレミアムの期間などです。またDCF法では「期央主義」にするのがここ最近のトレンドです。
【各手法の説明】
純資産額法
・対象会社のBSの含み損益について把握し、時価純資産にて評価を行います。
・純資産法はマルチプル法やDCF法と比べ、保守的な数値が出ます。非上場会社の時価総額が高めになる傾向の中(2022年時点)、軽んじられることが多い?純資産法ですが、「のれん」の算出のベースとなるのも、この純資産です。含み益や含み損を漏らさず、時価純資産を把握する必要があります。
類似会社比較法(マルチプル法)
・対象会社と似た事業を行っている上場会社をサンプリング(通常5~10社)のうえ、当期純利益倍率(PER法)や、EBITDA倍率(EBITDA法)、純資産倍率(PBR法)を組み合わせて、対象会社の企業価値を評価します。
・ベンチャー企業の場合には、赤字であることもままあるので、売上高倍率(PSR法)を用いることもあります。
DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法)
・対象会社の事業計画(実務では5年程度が多い)を基に、将来のキャッシュフローを基礎にした企業価値評価を行います。
・将来の変動要素が多い場合には、複数パターンの事業計画を基に企業価値を算出することもあります。
・割引率の算出においては、ポピュラーなWACC法を用いますが、徒に割引率が低くなっていないか、クライアントと議論を行います。「割引率=買い手にとっての投資のハードルレート」ということを忘れないようにしてください。
【DCF法固有の論点】
DCF法の場合、以下のような論点があります。実務のトレンドは変わっていくものなので、監査人に突っ込まれがちです。しっかりと理論武装して臨みましょう。
🔹割引のタイミングを「期央」にするのか「期末」にするのか。
🔹計画期間後の「投資額」と「減価償却額」の設定は。
🔹ベータはどこのデータベースから取るのが良いのか。
🔹ベータの観測期間は5年か?3年か?週次か月次か。
🔹非流動性ディスカウントを入れるべきか?入れる・入れないの根拠は?
🔹ヒストリカルリスクプレミアムは、19XX年からのデータを取るのが妥当か?
🔹サイズリスクプレミアムは適用するか?日本のものか?それとも米国のものか?
🔹運転資本の回転期間は、過去何年の実績を見て設定すべきか?